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見返りを求めない医療

2015年12月28日

本日で今年の診療も終わりました。


今年もいろいろなことがあり、本当に勉強させていただいた1年でしたが、患者さんの体調管理のために栄養学を取り入れたこともあり、当院の診療スタイルも大きく変わった1年でした。


東京でも講演させていただいたり、雑誌にも載せていただき、ある意味、当院の方向性を定めるために与えられたチャンスな1年だったと思います。


しかし、どのような方向へ進もうとも、物事を成すためには “人” が大切であることには間違いありません。


開業5年目。


まだまだ、多くの人の心とからだを任せていただくためには、もっと人を育てることについて学ばなければならないと感じています。


今年最後のブログは、人を育てることについて、元プロテニスプレーヤーの杉山愛さんの母親にしてコーチ兼チームディレクターを務めた杉山芙沙子さんのお話を紹介したいと思います。


杉山さんは、現在は自らが代表を務めるテニスアカデミーでジュニア選手を育成するかたわら、順天堂大学大学院医学研究科博士課程で、スポーツと自律神経の発達について研究を重ねられた経験から、人を育てることについてこのように語っておられます。




私はトップアスリートの母親として、またコーチとして杉山愛と深く関わってきましたが、常々、そこに介在する「人を育てる」ことについて、その本質とは何かを考えていました。


そこで、日本を代表する若手アスリート(錦織圭選手、石川遼選手、宮里藍選手)のご両親に直接話を伺い、私自身の経験を加味してまとめたのが、2010年に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科で書き上げた修士論文「日本の若手トップアスリートにおける両親の教育方針に関する一考察」です。


研究をとおして子供の育て方に関して様々な共通点が浮かび上がってきましたが、ここでは二つのポイントをご紹介します。


一つは親の子供に対する無二の愛、見返りを求めない愛情です。


もちろん世の多くの親御さんたちは愛情を持って子供たちに接しているわけですが、トップアスリートの親たちが間違えなかったのは、その無二の愛情を正しい方向に扱えた点にあります。


子供は体だけでなく頭も心もすごいスピードで成長していきます。


ところがその成長に親がついていけないために、自分の考えを押しつけてしまう現象が多く見られました。


これは何もスポーツの世界だけでなく、受験の世界でも同じような傾向があるようです。


大切なことは、無二の愛情を持って子供を応援する、子供のよいところを引き出そうと努力することですが、そのためには親もまた子供に置いていかれないように勉強する必要があります。


特に子供がジュニアでトップクラスの選手になってしまうと、親は自分が何をすればよいのか分からなくなってしまうケースがよくあります。


子供の世界がどんどん広がっていく一方で、それに見合うだけの情報量だとか会話力が親にないと、
そこから親子間に亀裂が生じ、それがもとで親に子供の才能が潰されてしまうのです。


子供への無二の愛情は、親にとってエネルギーの発生源になります。


その素晴らしいエネルギーを正しい方向に注ぐためには、親自身も学ぶ姿勢をしっかりと持つことが必要なのです。


もう一つのポイントは親と子供の距離感の取り方です。


どんなに競技レベルが向上しても相手はまだ子供です。


ですからいまは抱きしめる時、ここは突き放す時だということをきちんと理解して接してあげることが必要なのです。


ところが往々にして突き放してはいけない時に突き放したり、突き放すべき時にくっつきすぎることが見受けられますが、それでは選手としての成長を阻害しかねません。


そういった子供との距離感の取り方もまた親の学びにかかっていると言ってよいでしょう。


                                                    

                 杉山芙沙子(一般社団法人 次世代SMILE協会代表理事)

                                                      『致知』2016年1月号 特集「リーダーシップの神髄」




医療の現場でも、無二の愛情とはいかないまでも、この人にとって何が必要だろうと考えること。


そして、一方的に提案するのではなく、微妙な距離感をもって医療を提案すること。



やはり、こちらが良いと思っていても患者さんはそうは思わないことがあります。


今までは、それを受け入れないことが多かったのですが、今はそのタイミングではないんだなという距離感がわかってきました。


やはり、これがいいとか、これだけとか、限定された医療はない気がします。


当院は自由診療を扱うことが多くなってきましたが、日本の医療も患者さん自らが自分の医療に責任を持つ時代に入ってきています。


これからますます多くの医療の選択肢が増えていき、健康に投資をすることが、もっとも重要であることとなるでしょう。


そうなれば、お金を持っている人が得をすると言われるかもしれませんが、私は、そういった不平等が平等であると思っています。


家族、学校、仕事など、誰ひとり同じ環境ではありません。


その中で生きていくしかない状況が今ここにあります。


不平等であるからこそ何かを生み出そうとする力を人は持っています。


その過程を実りあるものと感じていただけるように、来年も、患者さんとスタッフと一緒に大いに悩みながら成長していきたいと思います。


当院をいつも応援してくださっているみなさん、今年1年本当にありがとうございました。


そして、スタッフ、家族に感謝!



                                       院長 野村


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