5年と言えば一つの節目ですが、開業医の大先輩からは「5年は辛抱しろ」と言われていたことを思い出しました。
当初は、5年もかかるのかと思っていましたが、今こうして5年が経ってみると納得するものがあります。
開院当初から数年は、当院の診療を形づくるために、患者さんやスタッフ、関係者の方々にまでも、非常に硬い接し方をしていたのではないかと思います。
それが正しいとも思っていました。
今の世の中、様々な健康法や医療の情報が溢れ、何が正しいのかわからないことが多くなってきました。
今まで私自身も、何か正解らしきものを求め、患者さんにも提案していたように思いますが、これまで多くの方々とお会いする中で感じたことは、“こうでなくてはいけない医療はない” ということ。
病気を治したいなら禁煙は当たり前。
糖尿病なら減量して当たり前。
薬は毎日飲んで当たり前。
でも、禁煙できない人、痩せれない人、毎日きちんと薬を飲まずなくなったら来る人、多いんです。
しかし、こういう人を否定したり、責めたりしても、お互いに何も得るものはありません。
スポーツや修行の世界なら、「やる気がないならやめろ」と言えるのでしょうが、病院は少し学校と似ていて、あきらめてしまったら、患者も生徒も道に迷ってしまうかもしれません。
遅刻したから、成績が悪いから、校則違反したから、学校に行くたびに嫌な思いをして、その子は成長するでしょうか。
禁煙できていないから、痩せていないから、血糖値が下がってないから、血圧が高いから叱られて、本当に体調がよくなるのでしょうか。
学校も病院も、上手くいかないことから色々なことを学んで、その人が成長していくために必要なものに気づく場所だということ。
しかし、今まで私はこう思えることはできませんでした。
できるようになったのは、実は多くの患者さんとの苦い思い出があるからです。
“ 病気は何かに気づくもの ”
オリンピックで4連覇を逃した吉田沙保里さんは、「こういう表彰式で、メダルを取る取らないとか、金・銀・銅で(扱いが)違う。負けた人の気持ちが分かり、いい経験になった」と語りました。
私は、このコメントを聞いて、吉田沙保里さんはある意味人生の金メダルを取ったのではないかと思います。
負けないとわからないことがある。
ギリギリまで戦って負けた人は、勝利という名誉よりも、生きていく上でとても大切なものを得ることができます。
人は苦しい時に、本当の愛情、信念、覚悟に出会います。
9月5日は、亡き義理の父の命日です。
宮崎に来ると覚悟を決めた日でもあり、この日を開業の日に決めました。
私の母は、今年50年続けた事業を辞めました。
開業5年の私からすれば10倍も大きな存在です。
遅刻魔、停学処分、成績不良など、学校生活は全く駄目だった私をあきらめずに育ててくれた母には、本当に感謝しています。
これからもたくさんの方と出会って、良いことも悪いことも含めて悩んでいきながら、“ あきらめない医療 ”を築いていきます。
みなさんもあきらめずに病院に来てくださいね。
院長 野村