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ボール磨きが下働きでなくなったとき

2014年06月02日

ブラジルW杯がいよいよ開幕しますが、今日のコスタリカ戦は良かったですね。


久々に強い日本を感じました。

一方、なでしこジャパンこと女子サッカーもAFC女子アジアカップで優勝!


なんだか日本が盛り上がってきましたよ。


ところで、皆さん。これまでなでしこジャパンに最も多くの選手を輩出してきた高校がどこか、ご存じでしょうか。

それは宮城県にある常盤木学園高等学校サッカー部です。


1995年、部員僅か5人からスタートし、全国大会最多優勝を誇るまでにチームを導いたのは、阿部由晴監督なのですが、その圧倒的な強さには、やはり理由がありました。






1995年、32歳の時に常盤木学園に赴任したんです。


サッカー部はなかったんですけど、サッカー同好会というのはありました。


その同好会の生徒を集めて一度練習してみたんです。


そうしたら、次の日から上級生たちが練習に来ないんです。


結局残ったのは新入生5人だけ。


5人じゃ当然試合にも出られませんし、練習もままならない。


ボールの蹴り方から教えていくようなレベルでした。


ところが、5人だけしかいないのにもかかわらず、その中で派閥ができてしまったんですね。


3人と2人とのグループに分かれて、2人が辞めていきました。


私も未熟だったんでしょうね。


3人が残り、次の年に入部したのが2人だったので、2年間は5人だけでした。


なんで派閥ができるんだろう?って反省しました。


その時に思ったのは、この子たちは誰かが教育的にしっかりとコントロールしてあげなかったら、勝手に自分たちの世界をつくって、意見が合うのと合わないので分かれてしまう。


だから、できるだけ一緒にいようと思ったんです。


それと、5人しかいないんですけど、彼女たちには「日本一を取るんだ」と、高い目標を勝手に決めて与えました。


で、日本一のために練習しているんだってことになると、必然的に次に入ってくる子たちもそういう気持ちになってくれるだろうと。


実際、3年目にはそこそこサッカーができる子たちが入ってきて、ようやく部員も試合ができる11人を超えました。


ただ一つ問題があって5人の先輩たちが新入生よりサッカーの能力が劣るものですから、練習で「あれっ?」って思われないようにしなきゃいけないと考えました。


その時は72時間くらい悩みました。


やっぱり考えれば出てくるんですね。


ある日パッと思いついたのが「年功序列をやめる」ということでした。


上級生に敬語を使うとか、下級生がグランド整備をするとか、そういうことを一切排除しました。


私は上級生に言ったんです。


「下働きは全部君たちがやれ。後輩に○○先輩、○○さんなんて言わせるな」ってね。


さらにこうも言いました。


「たとえば、君たちに小さな子供たちがかかってきても応戦なんかしないだろう。ところが、同じくらいの年齢の子がかかってくるとどうだ?構えたり応戦したり、何らかの行動を取るだろう。それはなぜか。小さい子には絶対に負けないという内なる自信がある。それが強さとなって子供を許す気持ちが湧いてくるからなのでは? 強い人間というのは我慢ができる人間。だから、下級生が自分に対して生意気な態度を取ってきた時に、我慢できる方が遥かに強いんだ」


こう論すると、彼女たちは見事に1年生のために下働きをやってくれました。


サッカーは決して上手ではないのですが、練習でも一生懸命、真剣に頑張っていました。


すると夏を過ぎた頃から1年生が上級生を尊敬するようになったんです。


上級生がタメ口をきいてくれて、威張らず、腐らず、グランド整備やボール磨き、練習の後片付けを一生懸命やってくれるわけですからね。


その姿が1年生の心を動かしました。


「自分たちもこういう上級生になりたい」と。


そうやって少しずつ素地ができあがっていったように思います。


3年目の時に、高校女子選手権の東北大会で3位になりました。

          


            阿部由晴(常盤木学園高校サッカー部監督)『致知』2014年6月号より





教育長から市長になられた経歴を持つ現京都市長の門川大作さんは、教育は人なりと言われています。



「平凡な教師は言って聞かせる。よい教師は説明する。優秀な教師は率先垂範する。しかし最高の教師は人の心に灯をつける」



人の成長にはかなず導いてくれる“先生”が必要です。


それが、親だったり先輩だったり上司だったり。


常盤木学園の先輩たちも後輩にとっては先に生きてきた人、いわゆる“先生”です。


その先生が率先垂範し、人の心に灯をつける。



医療は人なり。


「平凡な医師は言って聞かせる。よい医師は説明する。優秀な医師は率先垂範する。しかし最高の医師は人の心に灯をつける」



説明不足の自分には、まだまだやるべきことが多いようです。



                                      院長 野村



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