以前、あまり褒め過ぎるのは良くないと言いました。
今でも、自立するためにはその方がいいと思っています。
しかし、何かのきっかけをつくるには、自信を持たせることも必要です。
私が小学校4年生の時、社会のテストで、先生から採点されて戻ってくるはずのテストが、私だけ戻ってこなかったことがありました。
これはまずいことになったんじゃないかと思いながら、担任の先生に「僕のテストが戻ってこないんですが?」と聞いたら「野村君は100点だったからやり直しがいらないから」って言われました。
みなさん、この後の展開わかります?
そうです。
たった1回100点を取っただけで、自分は社会が得意なんだと勘違い!
それから社会が大好きになり、悪い点数は取れないから、社会だけは勉強していましたね。
結構、単純な性格なので、褒められるとすぐに木に登るんです。
でも、これもたまたまの出来事。
今日は、友人から頂いた “ちょっとしたきっかけ” のお話です。
“心のドアを開けるマスターキー”
私は子供の頃からうまく話せない吃音症という症状を抱えています。
これが原因で小学校高学年の時いじめに遭い、 以来、社会人になるまでずいぶんと心の荒んだ生活を送っていました。
人と話したい。 仲良くなりたい。 友達がほしい。
そんな気持ちを抱えながらも、うまく話せないイライラから素直になれず、 人との間に自分から壁や距離をつくってしまっていました。
そのため、友達はもちろん、気軽に話せる人、相談できる人も、 応援してくれる人もほとんどいない人生を送っていました。
それが変わったのは、社会人2年目。
20歳の時です。
東京で運命的な出逢いをした女性と、 その後13年間におよぶ遠距離恋愛をすることになるのですが、ある日の夜のことです。
電話で話していたら、(私の下の名前は「ひろき」と言います) 「ひろきさんの声ってステキだよね。聴いてると落ち着くから、何でも話せるんだ~。」 って、ほめてくれたんです。
私は彼女に出逢うまで、生まれてからずっと自分に自信を持てずに生きてきました。
そんな私にとって彼女の一言は、本当に、涙が出るくらいうれしかったんです。
自分を否定し、生きている価値なんてないと、ずっと思っていた。
話せないゆえに、想いがなかなか伝えられない。 誰にも相談できず悩み、苦しんでいた。
その私の存在が認めてもらえた瞬間だったからです。
それまで何とか話せるようになりたいと、ありとあらゆる話し方教室、 心理学系のセミナーやセラピーなどなど、 わらをもすがる想いで数えきれないくらい受けてきたのに、 まったく話せなかった。
それが彼女の一言で、ちょっとづつですが、 話せるようになったんですね。
彼女の一言が、私に生きる勇気と自信を与えてくれたことで、想いを伝えることや話せる喜びに満ち溢れ、心が震えました。
本当に心から感謝しています。
自分に自信が持てなかったり、価値がないと思っている時は、心にカギをかけています。
その頑なに閉じられたドアを開けられるのは、実は自分以外の誰かなのかもしれません。
私自身ありとあらゆるものを試しては失敗し、 どんなカギを使っても開かなかった心のドア。
それが彼女の一言(=マスターキー)で、 あっという間に開いたのです。
「人と関わらなければ生きていけないよ。」
ということを教えてくれているのかもしれませんね。
この出来事がなければ、私は一生人と関わることなく、 引きこもっていたことでしょう。
その方が楽ですし、ストレスも感じなくて済みますから・・・。
でも、今こうしてちょっとづつですが話せるようになって思うこと。
それは、「人っていいよ」と、心から思うことです。
もちろん傷つくこともありますが、 人を傷つけるのが人なら、人を救うのもまた人です。
心の中にある本当の想いや言葉。
自分にしか紡ぎ出せない想いや言葉。
それがたとえどれだけ拙くてもいい。
たとえケンカになっても、誤解を生んでもいいのです。
ちゃんと相手と向き合って伝えることが、 コミュニケーションにとって一番大切なことですから。
人は誰でも、輝く何かを必ず持っています。
ただ、それに気がついていないだけ。
自分の良さなんて、自分で気付くことは難しいですよ。
だから、自分を見てくれる人と出会う。
そのためには、自分が正直に人と付き合うこと。
明日は、当院の明暗を分ける大事なイベントがあるので、私も正直に頑張ってきます。
院長 野村