最近、うれしいことが多いんです。
それは、私の周りの人達が、きちんと相手と向き合って言葉を交わしてくれていること。
きちんと丁寧に接すれば、相手にはその気持ちは伝わり、実は相手も喜んでくれます。
今日は、そのような気持ちを、15歳の少年が日常で感じたお話しをご紹介します。
僕の親戚はおそば屋さんをしている。
僕は日曜日や祝日に手伝いに行くことがあるが、そんな中、一本の電話があった。
それは出前の電話で「おそばを一つだけ持って来てほしい」という内容であった。
その人の家が近いということで、僕が出前を持っていくことになった。
一番忙しい時間だったので、電話があってから一時間ぐらいたってしまっていたので、持っていった時におこられると思った。
その人の家までいそいで走っていった。
家につきチャイムを鳴らし元気よく「おまちどうさまです」と大声で言うと、60歳くらいの女の人が出てきた。
その女の人はおこるどころか、出てくるなり頭を深々と下げ、「こんな忙しい時に、一個だけ持ってきてもらってごめんなさいね。大変だったでしょ。」と言った。
驚いた。
言葉を失って立ちつくしていると「おいくらですか?」とたずねた。
僕はあわててお金をもらい、出前の品を渡した。
そして、さっきの言葉のお返しのように「ありがとうございました」と頭を下げた。
今まで僕は何回も出前に行っている。
その人たちも「ありがとう」や「がんばれよ」などと声をかけてくれるが、あれほどていねいに言ってくれる人ははじめてだった。
もし、逆の立場でもあれほどていねいには言わないと思う。
それは心の中で「出前を持って来てくれることがあたりまえ」とか「ありがとう」と言うことが恥ずかしいと思っているからである。
お店にもどり「あのお客様の出前は僕がいつも行くからね」と働いているみんなに言った。
みんなは不思議そうに「なんで?」と聞いた。
そして、今あったことを話すと「いい経験をしたね」と言ってくれた。
その後、僕にこう話した。
「やっぱり人は言葉が大切だよね。言葉で言わなきゃ伝わらないよね」と。
その通りだと思った。
夜の仕事も終わり、家に帰った。
そして、今度は家族のみんなに今日のことを話した。
すると親が「言葉は一言で人を喜ばせ、一言で悲しくさせる。言葉ってすごいね」と言った。
山口 誠(東京都品川区 15歳)『NTTふれあいトーク大賞 優秀作品集』NTT東日本
“相手がどう思うだろう 関係がどうなるのだろう”って思うと、なかなか言えず、伝えるということが苦しいこともありますが、結果的に言ってよかったと思うことがほとんどなんです。
黙っていることが何も起きない無難な方法と思われがちですが、それがかえって罪なことがあります。
相手に真意が伝わらず、誤解を招き、間違った時間をお互いが持ち続けてしまう。
医療訴訟もほとんどがコニュニケーション不足だと思います。
今の世の中、スピードを求められることが多いのですが、伝えるスピードはゆっくりな方がいい。
ちなみに、私は突っ走りながら、しゃべりまくっています!
院長 野村