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世の中の幅を知る

2014年09月13日

先日、診療も終わりかけた頃、動悸の40代の女性が来院されました。


受診された時も動悸が少しあるということでしたが、脈も速くなく、規則正しいリズムでした。


きちんと検査もして心臓には異常がないことを確認し、通常であれば、循環器的には問題ないということで終わるのでしょうが、何か動悸の原因があるはずですので、少しプライベートのことをお聞きすると、やはりありました。


どうも息子さんのことで悩んでおられました。


とても素直なやさしい息子さんで、家庭に問題はなく、学校での友人関係にトラブルがあったようです。


お話から彼が原因ではないようですが、売り言葉に買い言葉、そのあとの行動がよくなったために友人関係が悪化し、その学校でのストレスを家庭に持ち込んでいました。


ところが、学校の先生や周りの大人達が、彼は悪くはないと彼を理解してくれているため、彼はなんとか学校へ行くことができています。


しかし、相手が原因であっても自分の間違った行動に責任を取っていない。


きちんと謝罪をしていないため、その悶々とした気持ちが家庭での行動に現れているのだと思われたため、お母さんには、息子さんと一緒になってきちんとけじめをつけましょうと伝えました。


まだ高校一年生。


右も左もわからない年頃ですので、ここは親がしっかり道しるべをつけるべきです。


親の真剣な姿は、子供は必ず心に響きます。





このような話していると、3年前に一人の患者さんから似たような相談を受け、あるセミナーでお会いしたカリスマ体育教師の原田隆史先生に相談したことを思い出しました。


原田先生は、大阪市内の公立中学校に20年間勤務。


保健体育、生活指導に注力。問題を抱える教育現場を次々と立て直し、「生活指導の神様」と呼ばれ 、陸上競技部の顧問として、独自の育成手法「原田メソッド」により、勤務3校目の陸上競技部を7年間で13回日本一に導いた方です。






     

僕がなぜ生徒指導で神さんと言われたかというと、短期間にしんどい学校を立て直すからです。


そのポイントは二つ。


一つは、学校の秩序を回復させるために警察などの力も借り、徹底指導する。


二つ目は「育てる」ということ。


つまり、生徒が何を考えているのかを探り当て、その子の本当の心を知り、その声に耳を澄ますことです。


だいたい事件を起こす生徒は、家庭がしんどかったり、満足に教育を受けていないケースが多いんです。


気を紛らわすために万引きしてもバイクを盗んでも、満足感も充実感も得られない。


要するに本心は癒されたい、分かってほしいと叫んでいるんですね。


そんな子に「煙草を吸うな」と言っても、また吸いますねん。


で、どうするかいうたら、彼らのマイナスエネルギーをプラスに転換させる。


具体的には、クラブ活動、クラスの活動、体育大会、文化祭などの活動を多く提供する。


その中で何らかの役割を持たせる。


「班長やれ」とか「ライン引きをやれ」とか「清掃せい」とか簡単なことですよ。


それを徹底してやらせきるんです。


もちろん僕も一緒になって徹底指導します。


一切妥協はありません。


百回でも二百回でも反復練習させるとね、競技や活動のおもしろさとは別に、物事をやり遂げたという充実感を感じるんです。


ここで心から生徒を褒めてやる。


人間は些細なことでも、それを見ててくれる人がいて、認めてもらえると心が満たされるんですね。




話はずれますけど、生徒に遅刻をさせない方法を知ってますか?


一回目は本人と親に注意します。


二回目は朝、校門の前で立っています。


三回目は家に誘いに行く。


それでもあかんかったら、前の晩から生徒の家に泊まるんですわ(笑)。


親御さん、先生に泊まられたら嫌やから、学校に行かせる。


要は、そこまで教師はやりきらなあかんと思うんです。


ですから、僕は問題のある子を陸上部に入れる。


そこで三年間、千日近い間、自分の時間とお金を全部注ぎ込んで、朝から晩まで生徒に付き合う。


すると、掛け替えのない絆が生まれるんです。


気がついたら態度がよくなって陸上の成績も日本一ですわ。


いま全校生徒三百八十人のうち、七十人が陸上部員です。


どんな指導をするかというと、四月の初めに突然、日本一ばかり集まる大きな試合に無理やり連れて行って、出場させてもらうんです。


結果はもうケツのケツのケツですわ。ほんで


「おまえら偉そうにしとるけど、陸上の世界ではべべ(最下位)や」


と世の中の幅を思い知らせるんです。


悔しくて泣いている生徒に「やるか」と聞くと「やります」。


そこからスタートです。


それと同時に、生活習慣を改善させます。


朝は自分で起きろ、煙草吸うな、忘れ物するな、と薄紙をはぐようなことから始めるんですね。



              原田隆史(元大阪市立松虫中学校教諭)『致知』2002年9月号 より




踏み出せない一歩。


そばにいる人が応援してくれると前に進めることがあります。


自分でなんでもできる人なんてそうはいません。


自分でできることが強い人とも限りません。


たくさんの方に助けてもらって、そのことに感謝する。


そういったことができる人の方が強いのかもしれません。


高校一年生の彼にそれができたら、社会で生きていくために必要な大切なことを学べるはずです。



子供たちには、学校、家庭。


患者さんには、病院。



みんなであともう一歩前に進んでみましょうか!

                                      


                                      院長 野村
 


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