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銀杏の想い出

2011年12月19日

こんにちは(*^_^*)

 

今年は紅葉がずいぶん遅れたようですね。

 

少し時期は過ぎましたが、

私は 黄色く色づき、その根元に落ちた葉までも鮮やかなイチョウの木が大好きです。

 

そして毎年 黄色いイチョウの木を見ると思い出す患者さんがいます。

私が看護学生の時に出会った「受け持ち患者さん」で、優しく穏やかなおばあちゃんです。

 

 

そのおばあちゃんは 白血病を患っていました。

 

病気のため、食事や運動など 日常生活を送る中でいろいろな制限にしばられていましたが

おばあちゃんは、一言も不満や愚痴を漏らすことはありませんでした。

 

当時、実習先の病院の駐車場の周りに大きなイチョウの木が何本もあって

ちょうど黄色く色づいていました。

 

おばあちゃんは

「毎年この時期には銀杏を拾いに行く。今年はもう無理かもしれない。もう一度行きたかった」

としきりに話していました。

あまりにも淋しそうに見えたので、そのことを娘さんや担当の看護師さんに相談すると

担当医の先生から、血液検査の結果が良ければ外出してもよいというお許しが出ました。

 

おばあちゃんはその日から食事を残さず、手洗いとうがいをまめにして頑張りました。

そして数日後、やっと血液検査に合格したんです。

 

その日の午後 待ちに待った外出。

マスクにマフラーに手袋。毛糸の帽子。ジャンパーを2枚と毛布で足をくるんで。。。

老眼鏡をかけてビニール袋を握りしめ、車いすに乗ったおばあちゃんを連れて 

駐車場までの外出です。

イチョウの葉っぱに混じって沢山の銀杏が落ちていました。

強烈なニオイに苦しむ私を見ながら

おばあちゃんは夢中で銀杏を拾い続けました。

 

散歩中の他の患者さんも一緒になってにぎやかな銀杏拾いとなりました。

 

 

たった20分程の外出ですが、私には一生忘れられない20分となりました。

翌日からおばあちゃんは危篤状態となり、翌々日 旅立っていかれました。

 

おばあちゃんの枕元にはびっしりと銀杏のつまったビニール袋がおかれていました。

ショックを受け、言葉も出ない私に 娘さんは「最後に楽しい思い出を作ってくれてありがとう」と

手を握ってくださいました。

 

私は自分を責めました。

なぜ外出させたのか?はしゃぎすぎて無理をさせてしまったのか?

看護師さんや先生はなぜ許可したのか?

いろいろな葛藤にながいこと苦しみました。

今でも思い出すと涙がでます。

 

 

先日の看護師 森さんのブログ「未来への切符」にもありましたが、

亡くなった方からのメッセージは強烈です。

私はおばあちゃんに 命の尊さ、儚さ

人として看護師として大切な事を学ばせてもらったと思っています。

 

無事、看護師になり十数年たちます。

今となってやっと 当時の担当看護師さんや担当医の先生の想い

そして、あえて外出に同行しなかった娘さんの想いがわかるような気がします。

 

車いすから身を乗り出して 銀杏を拾うおばあちゃんのキラキラした笑顔は今でも忘れられません。

 

 

看護師としての私の原点となった出会いです。

 

 

 

 

                                   看護師 加藤

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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